um-hum リリース記念インタビュー② 前編 「JABU IN/TOHO」

第一弾「PLASTIC POP」編はこちら

um-humの連続シングルリリースにともなうインタビュー企画の第二弾。今回は7月12日と8月16日にリリースされた、「JABU IN/TOHO」と「曇りくらいがちょうどいい」ついて語ってもらった。

「JABU IN」は、2021年10月にリリースされたシングル「凡能」のカップリング曲だったインストのショートチューン、「Bass Head」がもとに作られた。ベースのリフとダンサブルなドラムを軸に、um-humらしいひねくれたユーモアも効かせた曲でライブアンセムになっていきそう。「TOHO」はソウルやジャズといったum-humを構成するルーツをストレートに表面化させたような、シンプルでオーセンティックな質感が光る。「曇くらいがちょうどいい」もまた、ネオソウルというルーツへの直接的なアプローチが印象的。そこに彼らならではのストレンジなセンスが溶け込み、絶妙な浮遊感を醸し出している。

本記事の2カ月前に行ったシングル「PLASTIC POP」についての第1弾インタビューと併せて、um-humが紡いできた物語と今のモードをぜひ感じてもらいたい。そして彼らの連続リリースは、9月13日と10月1日の2枚のミニアルバムへと繋がっていく。

――まずは7月16日にリリースされた「JABU IN/TOHO」について。曲を聴く前に、まずジャケットに驚きました。今までの作品と比べて色味が圧倒的に暗い。デザインは小田さんが手掛けられたのですか?

小田乃愛(Vo):「JABU IN」はもともとのタイトルというか、正式名称が「明日は雨、明後日も雨、ジャブジャブ・イン・ザ・水溜」なんです。雨の日に実際に起こった出来事に対して感じたことを歌詞にした曲で、それに合わせてデザインしたら、ダークな感じになりました。

――どんなことがあったのですか?

小田:前のレーベルに所属していたときに、um-humのことを真剣に考えて叱ってくれる方がいたんです。私たちのことを思って強く言ってくれていることだから、ありがたいことですよね。でも、そのうえでもびっくりするくらい、ろんれのん(Gt /Vo)が激怒された雨の日がありまして。その時のろんは、私の方から見ると泣いているようにも見えました。Nishiken!!(Dr)もたけひろ(Ba)も、同じようにろんのことを気の毒に思っていて、「一人にするのもあれだよね」って、それぞれに帰宅せずにみんなで難波の街を歩いたんですよ。歌詞はそこでろんに思ったことを言葉にしました。

――そうだったんですね。

小田:その日のろんは激怒されただけじゃなくて、そのあと快活クラブの従業員専用口を間違えて使っちゃって一発で出禁になったりとか散々で、けっきょく一人で帰って行きました。

ろん: 僕の立場からすると、とにかく早く帰りたかったんです。雨が降ると余計にセンチメンタルになるじゃないですか。そこで励まされている感じがほんとうにきつかったんで。快活クラブの頃には、間違えたとはいえ僕が悪いんですけど、もう「出禁?上等じゃい!」くらいの妙なテンションでした(笑)

――「JABU IN」の曲とサウンドはどのようにしてできていったのですか?

ろん:プロットは2年くらい前にできていました。um-humの作品を細かく聴いてくださっている方はわかると思うんですけど、2021年の10月に出したシングル「凡能」のカップリングに入っている「Bass Head」といいうインストのショートラックがベースになっています。その頃は、もっとライブ力を高めたいと思っていた時期で、目に見えて盛り上がりが生まれるような曲もほしかった。それで、「Bass Head」をブラッシュアップしたら面白いんじゃないかと思い、2021年の初めくらいから歌を入れ始めてライブでもやるようになって、さらに何段階かの変化があって今回のリリースに至りました。

――um-humの曲の中ではストレートに展開していくほうだと思うのですが、終盤はさすがum-humだなと。その部分がブリッジになってもう1回上げにいくのかと思ったら、そのまま終わる。その違和感が癖になって、今ではそうでないと気持ち悪いんですよね。

ろん:全体的なイメージとしては2021年の1月に出したミニアルバム『steteco』に入っている「meme」に近いかもしれません。ああいうリフが先行している曲のテンポをもっと上げたバージョンみたいな。最後の部分の、おっしゃったような「そこからの……、いかへんのかい!」みたいな感じは、わりと早い段階から決めていて、真っ直ぐ進んだ曲に対するum-humなりの句読点の付け方というか。

――um-humならではのマジックだと思いました。メロディはどのような過程を踏んでできていったのですか?

小田:最初にこの曲をろんが作ってある程度固めて、それを当時のレーベルの方も入っているグループLINEに投げた時に、「これは無しにしましょう」と返ってきたんです。それに対して私が「ライブのモチベを上げるための曲やのに!めっちゃ好きやのに!」って、ムカついたんですよね。それで新たにメロと歌詞を一瞬で作って、長文とともにグループラインに投げました。そこからなんやかんやで、自分たちで作り直すことにしてライブでも歌いながら今、という感じですね。

Nishiken!!:ライブでは、例えば「Bass Head」をイントロにしてシームレスにこの曲に移ると、サビでマイナーからメジャーになるんで、そこで「新しい曲できてない?」ってわかる人にはわかるとか、いろんなことを試していました。演奏していくうちにどんどん楽しくなっていった曲ですね。

――レーベルに所属するという経験を経たうえで再びフリーになってみて、どうですか?

小田:メリットもデメリットもありますね。やっぱり自分たちでできないことはできないですし、マネージャーがいないのも大変です。でも、みんなでいいものを作り上げるためということは重々わかっているんですけど、いろんな人たちが関わってくれて意見が飛び交うという環境がum-humは合わない気もします。と言つつ、それもあくまで私が今この瞬間に思っていることで……、という感じですね。いずれにせよ、私たちは周りから見ると謎のこだわりが強いんだろうな、とは思います。

ろん:僕らは右も左もわからないままバンドを結成したこともあって、レーベルに所属していた頃は、まだそこから作品を出すということの重みが理解できていなかったような気もします。もちろん真剣にやってはいるんですけど、僕らがただいいと思ったものを提出していただけだったので、意見の相違が生まれやすかったのかもしれません。

――「TOHO」はゆったりとしたグルーヴと歌をじっくり楽しめる、生演奏のみのシンプルな曲。サイケやプログレッシブ、オルタナティブといったイメージの強いum-humのキャリアの中では珍しいタイプですね。

ろん:もともとは電子音を中心にアレンジしていくイメージで作ったんですけど、スタジオで最初に合わせた時に、生でやったほうがいいんじゃないかと思いました。結果、今までのum-humらしくはないけど、人間味があって心が温まる曲になって、すごく気に入っています。

――まるでそこで演奏してくれているようなサウンドは、どのように録音したのですか?

ろん:まさに、その生演奏感とかルーム感みたいなものを大切にしたくて、レコーディングはマイクを一つだけ置いて、ドラム、ベース、ギター、順で重ねて録っていきました。それぞれ一発で、ミスもスタジオの床がきしむ音とかも残しているんです。ボーカルは小田がそんな演奏部分を受けて、「今だ」と思う瞬間を待って僕の家で録りました。

――ベースとドラムのお二人は、もともとジャズやファンクの生演奏家ですから、やりやすかったんじゃないですか?

Nishiken!!:ゆったりしていて間でグルーヴを演出しなければいけない。間芸ですね。これってレコーディングになるとめちゃくちゃ緊張するんですよ。いざ演奏が始まれば楽しくやれましたけど。ミスというか、ちょっとズレちゃったところは、僕のあとに演奏したたけひろが上手くカバーしてくれていました。

たけひろ:僕もめちゃくちゃ緊張しましたけど、二番目なぶん楽だったというか、Nishiken!!のやることを信頼しているんで問題なかったですね。

――Nishiken!!さんはたけひろさんに感謝している。たけひろさんはNishiken!!さんのやったことを信頼して演奏した結果。いい話ですね。

Nishiken!!:ですね。なんか恥ずかしいですけど(笑)。

Text:TAISHI IWAMI

Release Info

タイトル:JABU IN/TOHO
 M1:JABU IN
 M2:TOHO
リリース日:2023年7月12日(水)
配信リンク:https://nex-tone.link/A00119467

Profile

大阪発プログレッシブR&Bバンド。 1st mini album「[2O2O]」が全国のタワーレコードスタッフが話題になる前の新人をお勧めする「タワレコメン」に選出。 そして、収録曲「Ungra(2O2Over.)」がJ-WAVE「SONAR TRAX」に選出され、TOKIO HOT 100にもランクインするなど、注目を集める。 全楽曲の作曲を手掛ける、ろんれのん(G)はビートルズ、ジャミロクワイ、ロバート・ グラスパー、川谷絵音などを筆頭に様々な音楽から影響を受けるも、その作風は一聴してもルーツが分からないオリジナリティ溢れる作品を作っている。 そして、ジャズ研育ちによる楽器パート3人全員による卓越した演奏と、ジャケットのイラストを全て手掛け、作詞の一部も行い、ライブパフォーマンス時にはイスを持ち込んで座りながらも、観る者の眼を捉えて離さない魅力的なステージングを繰り広げる小田乃愛が一体となって、20年代の音楽を鳴り響かせる。