新東京、更なる躍進をファンに誓ったワンマンツアー「NEOPHILIA」ファイナル公演レポート

現役大学生による4人組ギターレスロックバンド、新東京が自身初となるワンマンツアー『NEOPHILIA』のファイナル公演が11月12日(土)、東京・渋谷WWWにて行われた。

2022年1月、音楽情報番組にピックアップされたところからその名を一気に全国区へと広げ、数々の大型フェスやテレビ出演などを果たし、この1年間で大きな飛躍を遂げた新東京。そんな彼らの記念すべき初ワンマンツアー、ファイナル公演の様子をお届けする。

リーダーの田中利幸(Key.)がはじめに入場し、「新東京です、お願いします」と観客に挨拶を告げるとEP『新東京 #3』に収録されている「The summer was 11Hz」より伴奏のみを取り出したアレンジでメンバーを迎え入れ、同EPに収録されている「Pearl」からライブはスタート。それぞれの繊細さと不穏さを併せ持った演奏に、オーディエンスは一気に新東京の世界へと呑み込まれていく。

続いて披露したのは新東京の楽曲の中でもエレクトロかつダンサブルな要素の強い「Heavy Fog」。杉田春音(Vo.)のハスキーで切なげな歌声と大倉倫太郎(Ba.)の特徴的なベースライン、保田優真(Dr.)がタイトに刻むスネアとハイハット、田中の変幻自在なシンセサイザーの音でフロアを踊らせたその様子は静かに、かつ熱く燃える青い炎のようであった。

自身初となるワンマンツアーファイナルのこの日は公演1ヶ月前にはチケットが完売し、『NEOPHILIA』(=新しいもの好き)たちからの注目度の高さも伺える。MCでは杉田が「今日は皆さんの熱量をいっぱい感じたいなと思っているので、どうかよろしくお願いします!」と告げ、実在の場所をモデルに書いたという「Metro」を披露。続く「ユートピアン」ではジャズを〝新東京〟なりに解釈し楽曲に落とし込む田中の作曲家としてのスキルの高さに改めて驚かされる。

人の多さにまだ慣れないとはにかみながらも「みんな、今日は最高の夜にしようね。」とメンバーに投げる杉田と演奏で応えるメンバーの間に深い絆が見えた瞬間であった。

現在制作中であるというEP『新東京 #4』より立て続けに未発表曲「ショートショート」「ポラロイド」を披露。#3で挑戦していたダークな雰囲気を持ったエレクトロサウンドから一転、憂いを帯びつつもポップで新東京らしさが存分に発揮されている。原点回帰になる一枚とも言えるだろう。

『新東京 #4』について田中が「今回は(曲の)構成にもすごく凝っていて、ドラムとベースにも複雑な構成を頑張ってもらってて…」というと保田優真は「めちゃくちゃ本当に迷惑しています」と冗談混じりにコメント。その分、いい曲が出来上がったことに感謝をしていると保田が告げると、コメントを求められた大倉も「概ね、同意です」とだけ告げ、会場の笑いを掻っ攫っていく。

彼らのデビュー曲であり代表曲とも言える「Cynical City」では、ミラーボールに反射しオーディエンスの頭の上を過ぎていく光が一拍ごとにコマ送りのように変化していき、正にシニカルに、変化していく街とそこに流れる時間を思わせる。そしてライブでは定番となった同曲の間奏部でのソロ回しは各メンバーが積み上げてきた実力と自由度の高さが解放され、曲の持つ刹那的儚さとそれ故の煌めきという相対する2つの魅力が爆発し、会場全体の温度が上がったことを肌で感じられた。

「ほら、美しいでしょう?」といった歌詞が特徴的な「The Few」ではサビ前に一度静寂が訪れ、それを切り裂くような鋭くキックが響き、さらに会場を盛り上げる。その後「sanagi ver2」では原曲からエレクトロの要素を取り除き、シンプルなアレンジにしたことによって杉田の声が持つ独特の寂しさや祈るような優しさが際立っていた。キーボードの爽やかかつ麗しいリフレインが印象的な「Garbera」に続き、本編最後の曲となったのは「36℃」。イントロ中、杉田がメンバーに今後の目標を問いかけるとリーダーの田中は「(新東京で)アジアツアーで」、続く杉田は「僕は免許がほしいです!」、大倉は「この後、美味い飯を食います」、保田は「来年もツアーができたらいいなって思います」と思い思いの自由な回答を繰り広げたものの、演奏ではしっかりと「36℃」の持つ温もりや寂しさを表現し、そのギャップがまた、オーディエンスの心を掴んで離さない。

鳴り止まないアンコールの拍手が巻き起こる中、今か今かと待ち構えるオーディエンスの前に大倉が1人で登場。準備体操を念入りに行った後、「みんな来ないんで、1人でやりまーす」と宣言すると〝スーパー大倉タイム〟に突入。大倉の奏でる水面に滴が落ちて広がる波の様に静かに確実に広がっていき、骨の髄まで震わせるような低音から鳥のさえずりのような高音までを自由に操るアンビエントを1本のベースで表現する。普段は土台の部分を作るベースという楽器のイメージを覆すような演奏で、観る者全てを魅了した。

次に登場したのは保田だ。またもや大倉が「みんな来ないんで、2人でやりまーす」と宣言し互いに向き合った。大倉が「かかってこいよ」と言わんばかりに保田に手招きをすれば、火花が飛び散る様なセッションが始まる。オーディエンスからは自然と手拍子が巻き起これば、大倉の高速スラップが輝きを放ち、それに呼応するように保田のタイト、かつ大胆なドラムが繰り出される。覇気をも感じさせる2人の熱く弾けるようなジャムは一瞬にも、永遠に続くようにも感じられた。

「早く来い!」と大倉が招き入れると「どこが終わりかわかりませんでした…」と笑いながら杉田と田中が揃って舞台上に現れた。全員が揃うと『新東京 #4』に収録されることが決まっているバラード「曖させて」を披露。

最後の曲となった「Morning」では杉田がステージを自由に歩き回り、オーディエンスと視線を交わしながらコミュニケーションを取り、今、同じ空間を生きていることを再確認させてくれる。大倉から始まったリズム隊のソロでは2フィンガーでの速弾きと高速スラップによって生まれるグルーヴが心地よい。お次の保田のドラムはとにかく正確に刻みまくるのもレイドバックすらもお手のもの。そしてそこに田中の鍵盤の上を駆けていくような華麗なキーボードが加わり一糸乱れぬ呼吸で会場のボルテージはどこまでも上がり続ける。割れんばかりの拍手を浴びながら大団円を迎え、新東京ワンマンツアー『NEOPHILIA』は幕を下ろした。

この日の白を基調とした全員のスタイリングは彼らのまだ何物にも染められてない無垢さと、これから何色にでも染まっていける自由さを表しているかのように感じられた。

今回の公演は彼らの集大成ではなく通過点であり、更なる躍進を感じさせるステージであった。

また、今回のツアーでは特設サイトだけでなくチケットシステムもセルフで構築するなど自力で歩いていく道を切り拓く彼らはこの旅を通じて吸収したものをどのように昇華させていくのだろうか。

これからも進化を続ける新東京から目が離せない。

Text by Ai Kumagai

なお、本ツアーで披露された「曖させて」と、新曲「ショートショート」の2曲は、12月7日(水)0:00より各種音楽配信サービスで2作品同時リリースされる。

セットリスト
SE    The summer was 11Hz
1       Pearl 
2       Heavy Fog
3       Metro
4       ユートピアン
5       ショートショート *新曲
6       ポラロイド *新曲
7       Cynical City
8       The Few
9       sanagi ver2
10     Gerbera
11     36℃
EC1  スーパー大倉タイム
EC2  曖させて
EC3  Morning

プレイリスト on YouTube Music「Presenting 新東京」
https://music.youtube.com/playlist?list=RDCLAK5uy_kNwKt3hRzmNZ95D7YxjGt_HKgmE3Ejeco