um-hum ワンマンツアー “ウンウンノワンマン”東京公演ライブレポート

2023/11/3(金)@下北沢BASEMENTBAR

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ソウルやファンク、ジャズ、ロックなどをルーツに持ちながらも、形式に捉われることのないプログレッシブなミクスチャー/コラージュセンスが光るろんれのん(Gt & Key)。ろんとはまた異なるタイプの、より感覚的で奔放な創造性を発揮する小田乃愛(Vo)。二人のシナジーを屋台骨で支えながら、縦横無尽なグルーヴを演出するNishiken!!(Dr & Samp)とたけひろ(Ba)のリズム隊。そんな4人だからこそ生み出せる、ポップもカオスもストレンジもワンダーも詰め込んだ自由な世界観。um-hum初の東京ワンマンライブは、そういった、筆者が彼らに抱いていたイメージから想像していた期待値の、遥か上を行くステージだった。

ろんのギターはシャープなコードカッティングもドロッとしたサイケなフレーズもお手のもの。さらには近未来や宇宙を感じるシンセサウンドまで自在に操る。芯の太さとしなやかさを兼ね備えたたけひろのベースは、曲の情緒やグルーヴに抜群の厚みと安定感を与えていた。Nishiken!!のドラムは、シンプルな8ビートや四つ打ちも、溜めの効いたスロウなプレイも、その一打一打にソウルを感じる。ステージ上手前方というセッティングも含めて迫力満点だった。フロントマン・小田の存在感は圧倒的。そのum-humワールドを体現する歌のバリエーションと身のこなしからは片時も目が離せなかった。

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そして、セットリストがそんなum-humのパフォーマンス力をさらに豊かなものへと昇華させていた。9月と10月にそれぞれリリースされた2枚を併せて1枚のアルバム、『UMA』と『HUMAN』を軸に、これまでのum-hum歴史を盛り込み、セクションごとに色を持たせながらトータルで楽しめるような流れは、まるで一つのテーマパークを回遊しているよう。スリリングなコースターあり、非現実を体験できるアトラクションあり、じっくりと鑑賞できる劇場あり、皆で踊れるダンスフロアあり。そこが夜の下北沢であるという感覚が完全に飛ぶ、贅沢でファンタスティックな音楽体験だった。

まずは最新作の一つ『UMA』から「U-MOON」、さらにギアを上げた「JABU IN」とアッパーな2曲を立て続けに。次の「JoJo」に入った瞬間小田がお立ち台に上って「来てくれてありがとう、楽しんでこか」と発すると場内には大きな歓声が湧き、そのままシームレスに「City’s Broken Heart」へ。大いに盛り上がったあとの深海を遊泳するような後半のパートが心地良い。

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そして小田が「ワンマンってことでカバー曲をやるんですけど」と話し、フィッシュマンズの「BABY BLUE」を演奏する。原曲とum-humの持つ重力が抜けたようなサウンドの愛称は抜群。そんな無重力感覚の流れを受けて、宇宙人のようなエフェクトのかかったボーカルが印象的な「隙間」へ。ループする太いベースラインも曲への没入感を高める。そして、ここまでの浮遊感はそのままに、腰にくるミドルテンポのR&Bビートの効いた「ユウマ」のチルなダンスグルーヴが優しくフロアをロック。前方から後方まで、観客は思い思いに体を揺らす。

そんな和やかなムードのままに、ろんれのんが口を開く。「um-humのギターのろんれのんといいます。今日はありがとうございます。ちょっとMC下手な僕らなんですけど、ちょっとたけひろさんとお喋りしたいなと思って」と話し、Nishiken!!も交えてこれまでの東京遠征や“2枚併せて1stフルアルバム”、『UMA』と『HUMAN』のレコーディングでのおもしろエピソードを話すと、場内には笑いが起こりアットホームな空気に。そして「そんなアルバムからやります」と『UMA』から「Plastic L」を披露した。

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この曲の前に演奏した「ユウマ」もそうだが、ここ最近のum-humは手数やトリッキーなリズム展開で魅せるだけではなく、90年代のR&Bやヒップホップの流れを感じるシンプルなビートの上で遊び心を発揮する、引き算的発想を積極的に採り入れることで、明らかに懐の深さを増している。それらの曲がライブでは絶妙な緩和を生み出しているからこそ、続くテンポを上げた「エイムズ」やカオティックなアレンジの「Dober Man」、ポップなだけでは終わらない「meme」といった、表で個性が爆発する曲もより躍動しているように感じた。

小田が「『UMA』と『HUMAN』の『HUMAN』に入っているしんみり系の曲やります」と言い、「曇りくらいが丁度いい」、「行けなかった個展」、「Happiness is….」を演奏。モダンなネオソウルやジャズの要素を感じる3曲だが、静けさの中で、じわじわとボルテージを高めていくグラデーションは見事だった。「Happiness is ….」での小田のラップ、クラップ音やろんの歌うフックのエモーショナル且つ甘いフックのメロディに場内が沸く。

そこから一気にギアを上げアッパーなディスコ「Dachs Hund」へ。ろんのギターソロ、小田のダンスも炸裂。そこからこれまでのライブでもハイライトを飾ってきた曲の一つ「Windowz」、『UMA』から「Popcorn」を続け四つ打ちのサビではフロアに乱舞の波が。この日いちばんのフィジカルな盛り上がりの中、本編を締めた。

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アンコールの1曲目は「Gum」。後半に向けて激しく横ノリを高める。ラストは「TOHO」を演奏。『UMA』収録の「JABU IN」とダブルAサイドシングルという名目でありながらあえてアルバムに入れなかった曲だが、X / Twitterに流れてきたライブ映像が素晴らしかったので、今回演奏して欲しいと思っていた。“そのままでは終わらない”イメージの強いum-humが、往年のネオソウル直系、生音のみで勝負する曲。BASEMENTBARというアーティストと近い距離間でライブを楽しめる箱で味わうビタースウィートなメロディ、スローな曲の音と音の間にある振動やアンプを通さない音まで聞こえてくるライブ感に心が震えた。

um-humが1stシングル「GUM」をリリースしたのは2020年5月。すなわちその初期活動のほとんどをコロナ禍とともに歩いたバンドが、今回の東阪ワンマンを成功させた。それは休むことなく制作を続けてきたことと、できる範囲でライブを重ねてきたことの賜物だ。そしてそのスケール感や表現力はこの先どこに向かうのか。4人のネクストフェーズが楽しみで仕方がない。

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Text:TAISHI IWAMI
スチール:キッシー(2,4,5)
スチール:ななほう(1,3,6)

Profile

大阪発プログレッシブR&Bバンド。 1st mini album「[2O2O]」が全国のタワーレコードスタッフが話題になる前の新人をお勧めする「タワレコメン」に選出。 そして、収録曲「Ungra(2O2Over.)」がJ-WAVE「SONAR TRAX」に選出され、TOKIO HOT 100にもランクインするなど、注目を集める。 全楽曲の作曲を手掛ける、ろんれのん(G)はビートルズ、ジャミロクワイ、ロバート・ グラスパー、川谷絵音などを筆頭に様々な音楽から影響を受けるも、その作風は一聴してもルーツが分からないオリジナリティ溢れる作品を作っている。 そして、ジャズ研育ちによる楽器パート3人全員による卓越した演奏と、ジャケットのイラストを全て手掛け、作詞の一部も行い、ライブパフォーマンス時にはイスを持ち込んで座りながらも、観る者の眼を捉えて離さない魅力的なステージングを繰り広げる小田乃愛が一体となって、20年代の音楽を鳴り響かせる。
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